年収1000万リーマンのとある月の給与明細
年収1000万といっても様々な給与モデルがあるが、
僕の場合はもっともシンプルな体系である、基本給とボーナスだけだ。
もちろん昇給のタイミングで月額も変わるし、個人や会社業績でボーナスも変動するので正確ではないが、ざっくりで表すとこんな感じだ。
月額66万円×12+ボーナス合計210万=1000万。
下記がとある月の給与の明細だ。
〈A.額面給与:¥657,071 〉
〈B.社会保険:¥90,346 〉
健康保険:¥28,900
厚生年金:¥59,475
雇用保険:¥1,971
〈C.税金:¥79,630 〉
所得税:¥41,030
住民税:¥38,600
〈A.額面給与:¥657,071 〉-〈B.社会保険:¥90,346 〉-〈C.税金:¥79,630 〉
=〈手取り給与:¥487,095 〉
大体月の手取りで50万弱である。
もちろん少ないとは言わない。
そうは言わないが「え?こんなんもの?」という感じではないだろうか。
ちょうど昨日
手取り15万円 自動車整備士の窮状 - Yahoo!ニュース
という記事がyahooニュース出ていたが、それよりも多い17万が額面から毎月ひかれていく。
そのうえで収入制限なるもので、公からのサポートしてもらえる給付金はもらえないか、あるいは、大きく減額されている。
支出面はどうか。
家賃(駐車場含む)と水道光熱費で15万(東京だとごくごく普通、むしろ安い)
保険(車含む)とガソリン・通信費で5万
食費と衣類で8万
僕は車持ちで家族がいるので、この合計28万は絶対にかかる最低生活費。
これに加えて。
NISA+IDECO:5万
子供習い事:1万
おでかけ:4万(外食含む)
ここまでを合計すると38万で手取りから引いた残11万が自由に使えるお金だ。
その11万円の中で、コンビニに行ったり、Netflixを契約したり、出前館を注文する。
車検だったり、冠婚葬祭、壊れた家電・家具購入などもあるから、それを考量すると実際に数万円ほどしか手元には残らない。
別途ボーナスで手取り140~150万は入ってくるが、これは家を買うための頭金と子供の教育資金、そして老後資金として必要になるのでロックせざるを得ない。
つまりだ。
子供を平均的な習い事に通わせて、車で月に1~2回は家族で遊びに出かける事ができる。
将来、5000万程の東京平均未満のマンションを買い、二人の子供を大学まで進学はさせてやれそうだ。
会計の金額を見てしまうと落ち込むが、何かの記念日に高級ホテルやディナーに行くこともできる。
あらゆる場面において、ひもじさを感じることはないが、かといって華やかさは決してない。
これが年収1000万円のレベルだ。
派遣から正社員になる方法
僕が派遣からどういったプロセスで年収1000万になったかを4つのSTEPに分けてあらましを書いた。
最も重要なのは STEP3:転職する(エージェントはmust)ことであるのは疑いないが、派遣社員にとって一番難易度が高いのは STEP1:正社員になる だろう。
派遣として年齢を重ねてしまった数ほど、その難度は比例して上がってしまうだろうが、少なくとも、30代前半までの人にとっては僕の経験は参考になると思う。
とはいえ、何か変わったプロセスを踏むわけではない。
まずやるべきは、エージェントに登録する事だ。
無難にリクルートエージェントあたりをお勧めする。
僕自身もそうだったが、職歴がゴミすぎる派遣社員にとってエージェントとの面談さえも苦痛だ。
強みとして語れる部分がほとんどなく、とても恥ずかしい。
傷つく。
それでも、エージェントの力が必要になる。
職務経歴書や履歴書の書き方、面接対策セミナーなどで必要な事を教えてくれる。
もしかしたらセミナーなどは登録しなくても受講できるかもしれないが、いつでも相談できる窓口はあった方がいいし、実際の面接の際には、過去聞かれた質問などをリストにして渡してくれるなど明らかなメリットがある。
また、応募条件に満たない場合も企業と会話してセッティングしてくれる可能性が出てくるし、面談日の調整のやり取りも都度緊張しながら自分自身でやり取りする作業をSKIPできる。
ただ、派遣社員のような人材はエージェントにとって収益期待値が低く、モチベーションは高くないだろうし、どういった人物か自身の担当になるかはほぼ運任せになる。あまりうまくいかないようなら他のエージェントも試してみるといいだろう。
ここまでで、必要な書類と面接についてのノウハウを準備できたら次は応募である。
僕の場合は20件ほどの応募を薦められて、その通りにした。
僕の場合、その中から4社ほど面接に行くことができた。
そして、最後に面接だ。
面接は、派遣社員が正社員になるために最も頑張らくてはならないステージだ。
「人と話すのが得意じゃない」
「面接だけは苦手だ」
などと言ってる場合じゃない。
キャリアと経験が圧倒的に劣っている派遣社員が、普通の人たちに勝てる可能性があるステージはここだけだ。
面接で抜群の印象を残すことで、下剋上を起こすことができる。
僕の場合、4社の面接を受けて2社内内定をもらったが、落ちた2社も最終面接まではいった。
言い換えれば、何も持たない派遣社員が4社とも1次面接は通過する事ができた。
なぜそんなことができたのか?
それは、徹底的な面接対策をしたからだ。
例えば「志望動機は?」「なぜうちの会社を志望したのか?」「あなたの成功(失敗)体験を教えてください、また、そこから何を学びましたか?」といった、googleで検索すればすぐに出てくるような面接の典型的な質問集がある。
僕が最初にやったのは、これらのような質問集のすべてに回答を文章で用意し、すべてを口語で暗記した。
やってみてもらうとわかるが、文章と口語ではリズム感が違うため、文章丸暗記では違和感がでてしまう。
面接をシュミレーションしながら、言い回しや間を自然な感じになるまで修正し、反復練習した。
慣れてきたら、暗記してきた事がばれないように、今考えて回答しているような空気感ができる所まで詰めた。
ここはしゃべりが上手下手ではなく、反復練習の地道な努力だ。
ちなみに、当然のごとく結構つらい。
だけど「面接は自分のありのままをぶつければいい」といったスタイルではダメだと言い切れる。
たぶん、派遣社員が行ける面接の数はそう多くはない。
行けた面接は全部受かる気概で臨まないと、チャンスを棒に振るかもしれない。
そのためには準備できることは、しすぎるほどしておくべきだ。
また、典型的な質問ではなく、その企業固有の質問というのもある。
それらの情報はあらかじめエージェントに過去問を貰い、これもあらかじめ回答を用意し、口語で暗記だ。
とてもオーソドックスな手法だが、面接で回答を暗記しまくっておくのが特徴的だと思う。
受けた面接の1つ。
面接官に途中で「...あなた...相当準備されて臨んでますね?」と言われた。「はい、もちろんです」と答えた。
その面接は、即日次の面接日の調整連絡が来た(合格の意)。
また、最終的に入社する事になった会社の最終面接を担当していた当時の事業部長は、入社後、僕を「過去最高に面接の応答がずば抜けていた。他社と競合することになったら、条件を上げでも獲ると人事に言っていた」とまで評してくれた。
準備をすることで、1つの回答が別の質問の回答と矛盾していないかを事前にチェックもできるし、どの面談でも安定的に自身が考える最高の回答をする事ができる。
もしかしたら暗記してることがばれるかもしれないが、それは決してマイナスに受け取られない。それくらい準備をしてでも入社したいという強いメッセージになっているからだ。
今、僕は面接官の立場で面接を担当する機会もある。
大体の人がその場で回答を考えて回答している。
どの人もきっと能力もあり、キャリアも立派なのだろうが、はっきり言って、当時の派遣時代の僕の面接の方がクオリティーが明らかに高いといつも思う。
自身の能力やキャリアに自信がある人の多くは、面接準備は特段していないことが多いからこそ、僕は面接こそが、派遣社員にとって大きなブレークスルーの可能性があると思っている。
年収1000万に至ったプロセス
派遣社員から数年で年収1000万サラリーマンになったことを書いた。
ところで、これは僕だけが可能なとても特殊な場合のケースなのだろうか。
まぁあんまり一般的なキャリア形成ではないだろうし、これは作り話の類か、僕がとても幸運なだけの人と思う人もいるかもしれない。
しかし、僕は下記の条件を満たせば誰でも可能だと考える。
1.首都圏在住
2.通常予見できるレベルを超えた不運と遭遇しない事
3.派遣から抜け出すために、あるいは、年収アップのためならば、あらゆる量的な努力を惜しまない覚悟、また、折れない心を持てること(現時点の能力は問わない)
1は僕が首都圏在住だからだ。首都圏以外でもできるかもしれないが私はわからない。
2は例えばリーマンショックやコロナなどのレベルの大きな社会情勢の変化で雇用市場が劇的に縮小する、あるいは、尋常ではないくらい頭のおかしい人が突然上司として赴任してきた等の、想定することが難しいレベルでの不幸に出会ってしまえば、私が辿ったプロセスを再現できないかもしれない。
3については、職歴、学歴、資格の3拍子を揃って全く持っていない「ザ・持たざるも」のだった僕が、唯一持っていたものだ。実際、ドラスティックに人生を変えるには、たくさんの辛いことに出会う。プライドも傷つけられるし、ぶん殴ってやりたい相手が腐るほど出てくる。
「お前のメンターになった俺のことも考えてよ。お前の覚えが悪すぎて俺の仕事できないんだよ。残業代お前払ってくれるのか?」
「え?こんなこともできないの?難しい事言ってないつもりなんだけど」
「なにこの資料?一日これやってたの?時間の無駄。もういいよ、僕がやるから」
実際言われたこと。
めちゃくちゃ悔しいし、傷つく。
ぶん殴りたいし、言いたいこともあるけど、相手が言うことも残念ながらわかる。
たぶんその人がやってたらもっと短かい時間で、質の高い仕事ができる。
自分があまりに無力で嫌になる。
そういう場面は絶対にたくさん訪れる。
その時に、「やっぱり無理。これ頑張っても評価されないじゃん。だってできないんだもん。やめよう」となってしまってはいけない。
「くっそ、ぶっ殺したい。じゃあこいつが過去に作った資料を持ち帰って、同じようなフォーマットで作れば文句言われないだろう。土日で足りるかわかんないから帰りの電車の中でパワポの使い方スマホで調べておこう」と明日の原動力に変えられるメンタリティーが必要だ。
なので、誰でも派遣から1000万リーマンになれるとは思わない。
たぶん3が思ってる以上にきついはずだ。
だけど、かつての僕のように、いつのまにか派遣社員の森の中に入ってしまい、なんとしてでもここから抜け出したいと強い意志を持ってるような人は再現できる可能性は高いだろう。
では僕はどういうプロセスを経て、年収1000万に至ったのか。
STEP1:正社員になる
STEP2:正社員になった会社で”高い実績”を作る
STEP3:転職する(エージェントはmust)
STEP4:転職した会社の定期昇給→1000万
書いてみるととてもシンプルだ。
一番重要な部分はSTEP3の転職だ。
”転職”で給与水準の高い会社に入ることが、持たざる者が年収1000万へたどり着く唯一の方法だった。
ではなぜ僕のようなキャリアの人間が給与水準が高い会社に転職できたのか。
それは、その企業が求める経験と実績を、転職の時には既に持ち合わせていたからだ。
また、それを証明するための書類と面接での対応が合格水準を満たしていた。
例えばindeedなどで求人検索をしてみてほしいが、多くはないかもしれないがこういう募集がたまにある。
年収500万~1000万
・〇〇業界の経験が×年以上の方
・〇〇の業務で高い実績を残された方
・〇〇ができると尚可
・年収は経験に応じてご相談
上記のような募集は、明確な採用基準が存在しないのだ。
例えば、「〇〇の経験が×年以上」というのは「未経験者は対象じゃないですよ」くらいの意味合いだし、「〇〇の業務で高い実績を残された方」というのは客観的な基準など存在しないので、書類や面接でしか誰も知ることができない。
実際、私は転職した時に、募集要項に書いてある「〇〇の経験が×年以上」の条件を満たさなかったが、転職エージェントを通して「経験が少しだけ足りないですが実績がすごいです」という点をアピールしてもらって面接にこぎつけた。
あとは、書類と面接次第。
ここでは言及しないが、徹底的な対策をして臨み、結果採用となった。
僕のキャリアから言えることは、年収を大きく上げるための武器は転職であり、だから、年収アップを望むならば、まず5年後どうなっていたいのかというゴールを設定すべきだ。
年収1000万である必要がなく、月50万の年収600万がゴールだったら、難易度はもっと下がる。
そして、そのゴールを満たすために入るべき会社を今の段階でリストアップする。
次にそのリストアップされた会社の募集要項を確認し、5年後そこに転職するために必要な経験と実績を確認する。
そして、それらの経験と実績を作るために必要な会社を探し、正社員として入る。
伝えたいことがちゃんと伝えれられているか不安。
重要なのは今の環境じゃない。
5年後(何年でもいいが)の転職を起点にして、そこから今を考えることが重要だ。
普通の人の方が逆にこれは難しいかもしれないが、キャリアのない派遣社員だったらチャレンジしやすいはずだ。
マッサージ屋さんの価格設定
コロナ流行後、うちの会社では決められた日数までは自由にテレワークできるようになった。door to door で通勤往復2時間がなくなるのは嬉しいのだけど、自宅の仕事環境が良くないからなのか、最近ひどく肩がこるようになった。
そういうわけで月に2,3回はマッサージに行くことにしている。
自宅から自転車で10分くらいのところにあるマッサージ屋さんがあって
僕はそこが気にいっている。
理由は2つ。
まず、シンプルにとても安い。50分3,000円。激安。
もう1つは、深夜2時まで営業している。遅くまで仕事をしていても、そのあとに行ける融通の良さがいい。
今日も仕事を22時までした後にその店に予約の電話をしたのだが、いつもとお店の対応が違った。
23時から予約が取れるか聞いたら、しばらくNoともYesとも言われない。
お店の別のだれかと相談しているようで、少し待たされ、そしてこう言われた。
「90分のコースなら予約可能です」
ほうほう、なるほど。
今日は金曜日で集客に困ってないから、客単価を上げたいということだ。
料金を尋ねると、90分6000円だという。
マッサージ1回に6千円は個人的には高いのだが、今日はどうしようもなく肩が痛かったのでお願いした。
前に、いつも通っている仲の良い美容師さんが話してくれたのだが、ビジネスとしてはカット・シャンプーが多い男性客は正直全くおいしくなく、オプションを色々オーダーしてくれる女性客をどれくらい囲えるか重要らしい。
マッサージ屋さんもたぶん似たような話なのだろう。
店を始めたばかりで、お客さんの数が少ないときは、競争力のある価格設定で集客をして、固定客がついて集客が安定したら客単価を上げに行く。
ビジネスとしてやってるのだから当然の戦略だ。
ただ、この90分6000円という価格設定はちょっと違和感がある。
例えば、スーパーやドラッグストアがチラシ広告をうって、ティッシュや洗剤といった生活必需品を地域一番の激安価格で載せる。それらの特売品目当てでくるお客さんは、来たついでに他店と変わらない価格の別の製品もおそらく一緒に買ってくれるから店の売上と利益は増えるだろうと見込む。
実際そうなるかはわからないけど、戦略としてこれはわかる。
また、例えば、プリンターや一眼レフを激安で売る。
価格設定次第では赤字になるかもしれないが、後にインクやレンズといった利益率が高い製品を買ってくれるので、中期的目線で見れば儲かる。
これもわかる。
ただ、マッサージ屋さんの場合、提供しているサービスは1つだ。
異なるのは「提供時間」という量の差だけ。50分なのか90分なのか。
僕が何を言いたいのかというと、マッサージ内容は同じはずなのに、料金の高い90分コースのほうが1分あたりの単価が高いということだ。
90分6000円=45分3000円<50分3000円
たこ焼き1個買ったら500円です、2個買ったらなんと1100円です!
そんな話だったら誰もが「このたこ焼き屋頭おかしい」と思うはずだ。
もし僕がとても意地悪な客で、50分3000円のコースを2回連続で予約すれば、100分6000円なので、10分お得にマッサージしてもらえる。
そんなことはもちろんしない、しないけれど、サービスの内容が同じである以上、たこ焼き屋と同じことをしている気がするのだ。
お店としては客単価を上げたいから、できれば料金の高いコースを選んでほしいと思っている。
一方、お客としては、料金の高いコースのほうが単純にコスパが悪いから、安いコースを選びたくなってしまう。
なのでお客さんが90分コースを選びたくなるような付加価値を加えないと、そのお店の目玉である50分3000円のオーダーばかり増えるのではないかと思う。
例えば、50分3000円と同じ1分単価で計算すると、90分5400円になる。つまり600円割高なのだ。
なので、90分6000円コースを受けたお客さんに対して、今日から1か月有効の600円以上の割引券を渡す。もし集客が決まって混雑する曜日や時間帯があるならば、そこは除外対象にすることで稼働率も上がる可能性がある。
お店にとっては利益率は下がるが、平均単価と来店頻度向上が見込める。
お客としても、例えば僕だったら、1か月以内にどうせまた来るし、割引券を使えば割高感もないので(割安ではないが)、次も90分コースをえらぶ可能性が上がる。
と、まぁ頼まれてもしないのにそんなことを考えていた。
実際はこの店が何をすべきなのかは経営者や店長じゃないとわからない。
集客が問題なのか、集客の偏りが問題なのか、集客は十分だが平均単価が伸びないのが問題かでやるべきことは変わってくる。
なにより、この価格設定が変わらなくてもどうせ僕は通い続けるのだろうから、意外とうまく回っているのかも。。。
派遣から年収1000万になった
約10年。
僕は、長い間派遣社員だった。
はじめて正社員として雇用されたのは30代前半だ。
ぶっちゃけ、この年になるまで正社員で働いたことがないというのは色々きつい。
お金も、社会や同級生や親族の目も、頑張ろうという気力も。
だからはじめて正社員として雇用してくれた会社から、自分の名前と、ドメインがGoogleやYahooじゃないメールアドレスが記載された名刺を渡された時は、一晩中それを眺めていた。
それほど嬉しかった。
大学中退、職歴は派遣のみ、資格は普通免許のみ、30代前半。
うーん、やはりスペックを羅列してみると、かなりひどい。
客観的にみて、このキャリアはけっこう「詰んでる」。
本当によく雇って頂けたと思う。
提示された給料は月25万+ボーナス(年収モデル350万~400万)。
社保完備、有給あり、退職金はないけどボーナスは安定的にある。
日給月給だった派遣時代は、休めばその分給料も減っていたが、
風邪をひいて休んでも給料が出るなんて、夢のような職場だと思った。
文句のつけようなんてない。
もちろんそれは普通の社会人にとっては当然普通のことなのかもしれない、ただ当時の僕には縁がない世界だった。
”20代で頑張れなかった人はきっと30代でも頑張れない”
周りの人がそう思うのはとても普通で、まともだ。
だけど当事者から言わせてもらえれば別に20代も頑張っていなかったわけじゃない。
一番最初のバスに乗り遅れてしまっただけだ。
一度乗り遅れてしまうと、バスに乗るのが怖くなる。
恥ずかしくて、足がすくむ。動けなくなる。
勇気を振り絞ってなんとか乗り込もうとした事も何度かあったけれど、その度に拒絶され、傷ついた。
ある時、優しい人が「今の仕事を一生懸命頑張りなさい、きっと誰かが見ていてくれるから」とアドバイスをくれた。
だけど、派遣社員の仕事をいくら頑張っても、スーパー派遣リーダーにはなれても、正社員に登用されることはない。
そもそも派遣先には僕の業務進捗度を管理する人はいても、評価する人は同じ場所にいない。
頑張りたくても何を頑張ればいいのかがわからなかった。
この道の先がどこか明るい未来につながってるとはどうしても思えなかった。
それと比べれば、正社員の環境は何を頑張ればいいかについて明確だった。
また、頑張った人がどういう待遇になるかも可視化された世界だった。
そして僕にとって幸運だったと思うのは、入った会社に1000万プレイヤーがいたこと、そして、年功序列の文化がなかったことだ。
だから、夢が見れた。
”あの人”と同じポジションにまで出世できれば1000万くらいもらえるとわかった。
キーエンスじゃなくても、士業の資格を取らなくても、MBAをもっていなくていいんだ。
この会社の中でトップクラスに優秀であることだけを証明して出世すればいい。
これまでと比べれば、ゲームの難易度が急に軟化したように感じた。
そして、いつかの優しい人の言葉をまた思い出した。
「今の仕事を一生懸命頑張りなさい、きっと誰かが見ていてくれるから」
今こそが頑張る時だ、と思った。
そして内なる目標設定をした。
”あの人”のように40才までに1000万プレイヤーになる、と。
約10年遅れでやっと正社員になれたばかりの、Excelもほとんど使えないような人間が、そんな目標を掲げるのはアホすぎるのだが、
お金持ちになれたらいいな、まともな暮らしができるようになったらいいな、というこれまでのようなぼんやりした目標は意味がないと思った。
自分がいつまでにどうなっていたいのか、輪郭線のはっきりした具体的な目標を設定すれば、そのために今何をすればいいか見えてくると考えた。
また、高い目標を掲げれば、仮に達成できなくても、少なくとも今よりは高い位置に届いているかもしれないというな気持ちもあった。
実際、これはその後の自身の様々な行動の意思決定の際にとても役立った。
例えば、誰もやりたがらないような仕事を「誰か担当してくれないか」と社内メールで募集があったとする。
こういう時、内なる声が聞こえるようになる。
「人より10年遅れてるやつが短期間で出世したいなら、こういう誰もやらない仕事やらなきゃいけないんじゃないの?むしろ誰もやりたくないんだから名を上げるチャンスだろ」と。
だから、好んで人よりも多くのタスクを抱えるようになった。。
仕事のクオリティーは急には変わらないから、当然、量=仕事の時間で調整した。
平日は朝晩ずっと働き、終わらなかったら土日で片づけるワークスタイル。
時代が最も推奨していない働き方。
そういう事を続けていくと、当然ブラックの会社じゃなくても、ブラック会社ばりの仕事量になる。
もちろん色々とてもつらかった。けれど、自分で納得感があった。
目標達成のために自分がすべきことをしてるだけだ、と。
なにより、派遣社員の時はどれだけ頑張っても評価されることはない。
派遣先にとっては外注の人間だし、派遣元にとっては優秀な人材より問題を起こさない人を安く使いたい。
彼らにとっては当たり前だ。
僕は、ちゃんと評価される環境で頑張れることだけで十分幸せだった。
そして、それから。
数年がたち。
僕は目標を達成した。
税込での給与総額が1,000万を超えたのだ。
自営のビジネスや株、FXを当てたわけではないし、Youtubeなどの副業もしていない。
サラリーマンとしての最も一般的な給与モデル(基本給+ボーナス)で1,000万をもらえるようになった。
1,000万円貰えたから一体なんだというのか?
そう、その金額自体には何の意味もない。
ただ僕にとって、この数年、自身を鼓舞し続けてきた目標数字だ。
そこに到達できたということがシンプルに嬉しかった。
とはいえ、現実的な話、僕は他の1000万プレイヤーと悪い意味でやっぱりだいぶ違った。
まず、住宅ローンに通らない。
派遣社員時代のクレジットカードの履歴が悪すぎるからだ。
不動産の営業マンからは、2年たったら履歴リセットされるのでその時また来てください、と言われた。
また、給与振込に指定している銀行から、突然「プラチナカードを作りませんか?」という招待状が届いた。
こういう機会じゃないと新規にクレジットカードを作ることもないので申し込んでみたが、案の定、こちらも審査落ちだった。
わざわざ招待状が送られてきているにも関わらず審査落ちするという事は僕の金融信用情報は相当悪いのだろうと感じた。
派遣社員当時、大事故をした記憶はないが、滞納の督促はがきはポストからあふれるほどあった。心当たりはとてもある。
そこで、普通のクレジットカードだったら作れるのか試してみようと思い、プロパーの最も低いグレードに申し込んだならば、それは承認が下りた。
しかし、使用限度額がなんと20万だった。学生時代に作ったクレジットカードですら上限50万はあったのに。。
そういうわけで僕が真の意味で1000万プレイヤーになるのはもう数年先になるだろう。
ローンは組めない、クレカはぎりぎり承認では年収がいくら上がっても意味がない。だけど、とりあえず、どん底から数年でここまではこれた。
今はまるで普通の社会人と同じように日々ふるまえている。
望んでこういうキャリアを歩んだわけじゃないけど、あそこまでギリギリの状態にならなかったらここまで頑張れなかった気もする。
一応言っておくと、派遣社員誰もが正社員になってお金を稼ぎたいと思ってるわけじゃないことは理解している。
たくさんのライフスタイルがあって、僕の当時の仲間だと、どちらかというとそっちの志向が強い人の方が多いかもしれない。
ただ、もし数年前の僕と似たような境遇で、同じような事を考えている人がいれば、一例として参考になれば嬉しい。
たぶん最も難易度が高いのは、一番最初のステップである”正社員になる”という事だと思う。
僕の場合、どうやったのかについては、また時間ができた時にまとめてみたいと思う。